採用企業向け
バイリンガル・マルチリンガル人材の採用動向と、企業を成功に導く採用戦略
2025-02-25
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世界経済の変動やテクノロジーの発展など、さまざまな要因が影響し、日本市場の採用環境は大きな変革期を迎えつつあります。
こうした状況の中、バイリンガル・マルチリンガル人材の採用において企業が競争力を維持し、成功を収めるために必要な視点について、BRSディレクターの中野と徳久が考察しました。
Profile
中野 聡
BRSの営業部門を統括。ヘッドハンティングサービスからポテンシャル層、東日本/ 西日本エリアと幅広い領域における転職・採用支援を経験。多様な経験を活かし、組織の人材戦略構築をサポートする。
徳久 愛子
BRS RPO サービス責任者。20 年以上にわたり採用支援サービスに従事。日系企業から外資系企業まで、多様なニーズに応じた支援を提供し、幅広い業界で実績を重ねている。
近年の日本市場において、語学力を持つ人材の採用トレンドにはどのような変化が見られるか
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中野:日本の人口減少とそれに伴う労働力不足が進行する中、多くの企業が国内市場の成熟や縮小を背景に、新たな成長機会を海外市場に求めています。これに伴い、グローバル事業拡大に向けたバイリンガル人材の需要はますます高まっています。以前は特定の業種や職種で重視されていたバイリンガル人材が、現在ではさまざまな分野で重要な役割を担い、採用戦略の中心となっていると感じます。
徳久:さらに、グローバル化の影響で多くの企業がビジネスを国内だけで完結させることが難しくなり、これも人材ニーズの変化を加速させています。購買から生産拠点の選定に至るまで、為替変動や地政学的リスクを考慮したビジネス展開が求められる中、グローバル規模での柔軟な対応力や調整力を持つ人材が一層、必要とされています。
中野:この流れを受け、候補者に求められる要件も高度化している印象です。語学力に加え、ビジネス展開を目指す国の文化や現地のビジネス構造への理解など、候補者に対する採用要件がより具体化しています。また、DXの加速により、企業間での採用競争が激化しているITエンジニアにも、より高度な専門知識や業界理解が求められるようになりました。IT人材不足は深刻化しており、経済産業省の推計では、2030年までに最大79万人のIT人材が不足する可能性があると指摘されています(※)。
語学力を備えた人材の採用における企業の課題とは
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徳久:大きな課題は2つあると考えています。1つ目は語学力が高く、グローバル対応が可能な人材が日本国内で不足していること。2つ目は、前述の課題とも関連しますが、外国籍人材の受け入れ態勢が不十分であることです。
中野:おっしゃる通り、外国籍人材の受け入れ態勢は依然として課題です。日本語中心の社内システムや生活面でのサポートに関するノウハウ不足が採用の障壁となっており、採用後も業務連携に苦労するケースが見られます。一部の企業では社内公用語を英語にする、外国籍人材を特定部門に配置するなどの対応を進めていますが、全体としては道半ばと言えるでしょう。さらに近年では、円安の影響で給与水準の競争力が欧米だけでなく、台湾などアジア諸国に対しても低下しています。優秀な人材が祖国や待遇の良い他国に移る動きが増えており、こうした課題への対応が急務となっています。
徳久:さらに広い視点で見ると、近年の採用課題の多様化も採用難易度を一層高める要因となっています。採用手法の進化に加え、ダイバーシティ採用など注目度の高いテーマへの対応が求められ、より戦略的かつ柔軟な視点が必用となりました。
中野:副業やフリーランスといった柔軟な働き方が普及する中、企業が個人として働く人材を活用する機会も増えていくでしょう。こうした変化に対応する採用支援サービスやツールが数多く登場していますが、それらをどう組み合わせ、自社に最適な採用を実現するかは、企業にとって重要かつ難しい課題と言えます。
多様化する採用課題や採用市場の変化に、企業はどのように対応すべきか
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中野:採用活動が複雑化している今、まず重要なのは自社の採用課題を正しく抽出することです。ソリューションを模索する前に、ビジネス推進に必要な人材ニーズや市場トレンドを分析し、優先すべき課題を見極める必要があります。同様に、事業戦略に基づいて採用要件を設定することも大切です。例えば、企業がDX推進を目指す場合、単に「DX経験者」を求めるのではなく、DXの進捗状況や現場の具体的なニーズに合った要件定義が必用です。
徳久:採用競争が激化する中、採用ブランディングも重要な要素といえます。求める人材が転職時に重視する点を理解し、そのニーズに応じて自社の強みを効果的に伝える必要があります。しかし、候補者ニーズや自社の差別化ポイントは企業側からは見えにくい部分でもあるため、採用市場に精通した外部の専門家を活用することも有効です。また、採用手法が多様化する中、採用コストや期間、候補者体験など、企業が考慮すべきテーマも増えています。BRSが提供するRPOサービスでは、パーソルグループの豊富なデータと採用ソリューションを活用し、従来の採用活動だけでなく、人材要件定義から戦略立案、ブランディング支援まで一貫したサポートを提供しています。
中野:私たちは、単なる人材紹介や採用代行にとどまらず、企業のビジネスゴールや経営課題に応じた戦略を共に考え、人的資本に関する課題をワンストップで解決することを目指しています。採用にお悩みの際は、ぜひご相談ください。
※ 経済産業省「IT人材需給に関する調査」