日本特有の採用課題とは　

4.タレントアクイジションによる戦略的な人材確保

2024-06-24

グローバル化や少子高齢化、デジタル革新の影響により、日本の転職市場でも優秀な人材の獲得競争が激化しています。

これまでの採用活動では競合他社に打ち勝つのが困難になるなか、近年、日本でも広まりつつあるのが、タレントアクイジションという人材獲得の概念です。

タレントアクイジションとは、企業のビジョンや成長戦略に基づき、中長期的な視点で人材を獲得していくアプローチで、海外の大手企業の間ではすでに一般的といえます。

この記事では、これまで日本企業が行ってきたリクルーティングとタレントアクイジションの違い、また、タレントアクイジションを効果的に実施する方法について説明します。

これまでのリクルーティングとの違い

これまでの人事業務は、「日本特有の採用課題とは　3.日本的雇用慣行と転職市場への影響」でも述べた通り、新卒一括採用や終身雇用、年功序列制度といった雇用慣行を中心に展開されてきました。

このため、特にバブル崩壊前までは、中途採用自体があまり活発ではなく、リクルーティングも主に欠員補充や特定ポジションを埋めるために行われてきました。

多くの企業で、採用活動は求人広告の掲載、選考、入社手続きといった業務の繰り返しにとどまり、必ずしも能動的な採用が行われていたわけではありませんでした。

一方、タレントアクイジションは、企業の成長戦略に基づいて将来の人材ニーズを予測し、潜在層へのアプローチや候補者との関係構築を行うなど、長期的な視点で戦略的に人材を確保していく「攻めの採用」です。

採用ブランディングの構築や競合分析など、より包括的なアプローチがとられ、従来のリクルーティングとはその範囲も実施期間も大きく異なります。

企業にとって最適なタレントアクイジションとは

このように、自社に合う優秀な人材を能動的に採用するタレントアクイジションへのニーズは高まっていますが、前述のとおり、従来のリクルーティングと比べて必用なスキルや能力が広範に及ぶため、多くの日本企業でノウハウが十分に普及していないのが現状です。

そこで、企業がタレントアクイジションを実施するにあたり考えられる基本的な3つの選択肢と、そのメリット、デメリットについて解説します。

方法 1

自社でタレントアクイジションの専門家を育てる

ひとつは、社内にタレントアクイジションの担当者を定め、自社でノウハウを習得していく方法です。

企業のビジョンや社内の業務フローに精通した担当者が取り組むため、会社のニーズにあった採用が期待できます。また、内部にナレッジが蓄積されることで、自社の採用力向上にもつながるでしょう。

一方、デメリットとしては、タレントアクイジションにはマーケティングや営業力など、通常の人事業務とは異なるスキルが必要となるため、人事部内での育成が難しいことがあげられます。また、担当者が経験を積んで効果的な採用をできるようになるまでには時間がかかるでしょう。

方法２

RPOサービスを活用してタレントアクイジションのための余裕を捻出する

二つ目は、RPO（採用代行）サービスに、求人広告の掲載や、面接、入社手続きといった従来の人事業務を委託し、社内の担当者がタレントアクイジションに集中できる環境を整えることです。

これにより、戦略立案や採用ブランディングといった、特に企業理解が必要な業務に社内の担当者が注力でき、タレントアクイジションの業務をより効率的に遂行できます。

しかし、１の方法と同様、効果的なタレントアクイジションのノウハウの習得に時間を要するほか、長期的に外部サービスに依存してしまう可能性もあります。

方法３

一時的にRPOサービスを活用してタレントアクイジションのナレッジを蓄積する

最後の方法は、一時的にタレントアクイジションに精通した RPOサービスを導入し、内部と連携しながら業務を遂行してもらうことです。

専門家の知見や最新のツールを駆使した効果的なタレントアクイジションを短期間で開始できることに加え、その活動を通じて社内にも効果的にノウハウを蓄積できます。将来的には採用活動を自立して行うことも可能でしょう。

タレントアクイジションに詳しい信頼できる企業を見つけ、効果的にコミュニケーションをとることが重要になりますが、3つの選択肢の中では、コスト効率が高く、短期的な効果と長期的な採用力強化を両立できるバランスの良い方法といえます。